よくあるご質問

IGRA検査の特徴

IGRA検査の正式な名称は何ですか?
Interferon-Gamma Release Assaysの各頭文字を採ったものです。日本語では、「インターフェロン-γ遊離試験」と訳されています。
IGRA検査とは、どのような検査ですか?
血液を使って結核菌に感染しているか否かを診断するための検査です。結核に感染している人の血液中には、結核菌群特異抗原に対して抗原特異的に反応してインターフェロン-γを産生分泌するTリンパ球が存在しますので、結核菌群特異抗原で刺激して産生されたインターフェロン-γをIGRA検査技術で測定し、その量で感染を診断します。
IGRA検査には、クォンティフェロンTBゴールドとT-スポット.TBとありますが、どのように違うのでしょうか?
クォンティフェロンTBゴールド(以下QFT-3G)は、全血を結核菌群特異抗原で刺激し、血漿中に産生されたインターフェロン-γ(以下IFN-γ)の総量をELISA法により定量します。T-スポット.TBは、全血より末梢血単核球を精製・濃縮し、これを結核菌群特異抗原で刺激します。T-スポット.TBではELISPOT法により、IFN-γ産生細胞の個数を測定します。

 

結核感染とIGRA検査

IGRA検査で活動性結核と潜在性結核感染を区別できますか?
IGRA検査では、これらは区別できません。これらを区別するためには、他の臨床所見や臨床検査が必要です。
IGRA検査で、いつ結核に感染したか分かりますか?
結核の感染時期は、IGRA検査では分かりません。従いまして、結核感染デインジャーグループ(医療従事者等)では、定期的な検査が望まれます。
IGRA検査の数値が高いと発病しているのでしょうか?
理論的にIFN-γ産生応答と抗原量は相関していると考えられていますので、検査値が高いと結核菌数が多い、すなわち発病するリスクは高い可能性があり、これを裏づける報告もあります。しかし、高いからといって必ずしも発病する訳ではありませんので、他の臨床所見や検査結果等を併せ総合的に判断する必要があります。
結核患者さんと接触があったため、接触者健診でIGRA検査を受けとところ陽性になりました。結核を発病するのでしょうか?

結核に感染して発病する人の割合は約10~20%程度と言われていますので、発病しない確率の方が高いでしょう。発病する人の多くは感染後早期(特に2年以内)に発病しますので、この時期には潜在性結核感染症治療(化学予防)と経過観察が重要になります。

結核の治療を受けるとIGRA検査は陰性化しますか?
多くの報告によりますと、治療終了者全員が陰性化することはありません。
結核に感染した人は、全員IGRA検査で陽性になりますか?
理論的にはそうなる筈ですが、稀に、感染後に陽性になった者が速やかに陰性化するという報告があり、これは自己の強い免疫能で結核菌を封じ込めた結果と考えられます。強い免疫力を持つ人がいれば、IGRA検査で陽性になる前に結核菌を封じ込めることができるかも知れません。このようなことを考えますと、現状では明らかな証拠は有りませんが、感染者全員が陽性なるとは限らないと思われます。
IGRA検査で陽性であった人が、特に治療しなくても陰性化することはありますか?
現在日本の高齢者の多くは過去に結核感染していると推測されていますが、実際にIGRA検査(QFT-2Gですが)を行いますと、予想に反しあまり陽性率は高くありません。このことより、比較的多数の人が長い年月を経て徐々に陰性化していると考えられています。
結核菌は細胞内で長期間休眠期に入り、宿主が高齢等により免疫能が低下すると活動を開始して発病することがあると聞きましたが、IGRA検査でこの休眠期の結核感染を診断できますか?
結核菌が休眠期に入りますと、IGRA検査で使用している特異抗原を産生しなくなると考えられています。抗原産性がなくなりますと、IGRA検査は陰性化すると考えられますので、この休眠期の結核感染はIGRAでは診断が難しいと思われます。
IGRA値は、同一人の場合は接触直後と2ヶ月後とで比較評価できますか?また検査機関が違っても同一人の結果として扱えますか?

IGRA検査の再現性については依然として重要な研究課題で、現状において明確な回答は有りません。ただし、接触直後IGRA陰性、2ヶ月後IGRA陽性のような場合は感染と判断できると考えられます。IGRA検査は操作上の技術が結果に影響する検査で、検査機関の担当技術者が専門機関の研修を受けているか否かチェックし、精度保証を受けた信頼のおける検査機関で実施された検査結果であれば、検査機関は違っても同一人物の結果として扱う事は可能です。

判定不可・判定保留は1ヶ月後に再検査をおこなっていますが、再検査の実施時期のリミット、検査回数制限はありますか?
特に設定されていませんが、何回検査しても判定不可に成る場合は被検者の免疫能を検査してみる必要があるでしょう。
喀痰陽性患者の接触者で現在妊娠中ですが、IGRA検査への影響はあるでしょうか?

妊娠がIGRA検査に及ぼす影響については、データが十分なく、今後確認しなければならない課題のひとつです。しかし、妊娠とツ反の関係で従来得られている知見から考えますと、IGRA検査結果に及ぼす影響はあまり考えなくても良いと思われます。

 

ツ反とIGRA検査の違い

ツ反はIGRAにどのくらい影響がありますか?
ツ反を実施してから数週間後にはQFT検査にはブースター効果が報告されています。一方でツ反を実施して数日後のQFT検査ではブースター効果は無いと報告されていますので、短期的にはツ反の影響を考慮する必要はありません。これはT-スポットにおいても同様と考えられます。
IGRA検査の利点は何ですか?
以下の4点について、従来のツベルクリン反応(以下ツ反)より優れています。
  1. 全てのBCG株や大部分の非結核性抗酸菌にはない抗原を用いますので、BCG接種や大部分の非結核性抗酸菌感染の影響を受けません(特異度がツ反より高い)。
  2. IFN-γの測定は機器により行いますので、ツ反より客観的な結果が得られます。
  3. 結果を得るため、ツ反では被検者は2回医療機関に行く必要がありましたが、IGRA検査は1回で結果が得られます。
  4. ツ反にはPPD投与によるブースター効果がありますが、IGRA検査ではPPDを投与することがありませんのでブースター効果はありません。

 

IGRA検査と諸因子

HIV感染等の免疫不全状態においてもIGRA検査は有効ですか?
IGRA検査には、その人の免疫能を見るための陽性コントロールがあり、これが基準値以上あれば診断が可能となります。また、一般的にT-スポット.TB の方が免疫不全の影響を受けにくいと言われていますが、QFTもT-スポットも正確な技術と正確な温度管理により、両者ともに有効と考えられます。
接触者健診対象者で、IGRA検査の予定されている時期に予防接種が予定されていますが、予防接種がIGRA検査に影響はありますか?
予防接種がIGRA検査に及ぼす影響については、いまだに十分調べられていません。しかしツ反への影響から推測して、ある種の予防接種(麻疹、風疹)に よっては、細胞性免疫に影響する可能性も否定できませんので、念のため予防接種はIGRA検査後にされることを推奨します。
インフルエンザ予防接種を受けますが、IGRA検査に対する影響はありますか?
これに関しては、これまでの研究では良く分かっていません。しかし、ATS(アメリカ呼吸器学会)によるツベルクリン検査のガイドラインでは、インフルエ ンザ予防接種後のツ反は推奨していませんので、IGRA検査への影響も否定できません。従いまして、念のため予防接種前にIGRA検査をされることをお勧 めします。
一般的な予防接種(インフルエンザワクチンなど)とQFT検査の相互影響や配慮の要否について、ありますか?
予防接種がIGRA検査に及ぼす影響については不明ですが、予防接種により結核に対する免疫応答が低下する可能性も否定できませんので、IGRA検査を予定している場合はIGRA検査を実施した後の予防接種をお勧めします。
喀痰陽性患者の接触者で現在妊娠中ですが、IGRA検査への影響はあるでしょうか?
妊娠がIGRA検査に及ぼす影響については、データが十分なく、今後確認しなければならない課題のひとつです。しかし、妊娠とツ反の関係で従来得られている知見から考えますと、IGRA検査結果に及ぼす影響はあまり考えなくても良いと思われます。
アルコール飲酒による検査への影響はありますか?
アルコール飲酒のインターフェロン-γ産生に対する影響は、データがないため分かりません。しかし、陽性コントロール(個人の免疫能)も見ており、これが正常範囲であれば判定可能ですので、アルコール飲酒後でも検査は可能と考えられます。

 

IGRA検査の注意すべき点

IGRA検査で判定不可の結果になり、免疫不全の可能性があると言われましたが、大丈夫でしょうか?
検体を不適切に取り扱った結果、判定不可になった可能性がありますので、原則的には再検査が推奨されています。再検査で再度判定不可になった場合、免疫不全を考慮しなくてはなりませんので、専門医にご相談下さい。
全国的に検査機関に限られると思いますが、IGRA検査を依頼する際には、検査精度(検査機関の選択等)について、考慮する必要はあるでしょうか?
日本と米国の両ガイドラインにありますように、IGRA検査を行う施設の検査精度は非常に重要です。検査機関を決める前に、検査施設に対して検査担当技師が外部専門機関による研修を修了しているか否か確認(終了証の提示を求める)すると同時に、採血後の検体保管温度、搬送温度の保持のやり方、結果に検査数 値の記載があるか、T-スポット検査においてはスポット画像を提出して貰いバックグラウンドが無いことを確認するなどして選定することが重要です。Q15 に回答しておりますが、検査技術により結果は全く異なることも有りますので、検査料金だけで検査機関を決定することは非常にリスクが大きいことを知ってお くべきでしょう。
採血後、抗原刺激まで30℃前後の温度に10時間以上保管した検体を検査に使用することは可能ですか?
我々の研究から血液のベストな保管温度は22℃です。しかし、メーカーの添付文書ではQFT:22℃±5℃、T-スポット:21.5℃±3.5℃を提唱しており、この範囲がIGRA検査に使用できる限界と考えられます。30℃では白血球の反応性が極端に低下して正しい検査結果を得られませんので、再採血が必要です。
採血後、抗原刺激まで冷蔵してしまいました。検体は検査に使用できますか?
冷蔵もまたリンパ球の反応性が減衰するため、正しい結果は得られません。再採血に依り正しい保管温度の下で検査を行って下さい。
添付文書では培養時間がQFTで16時間から24時間、T-スポットでは16時間から20時間となっていますが、培養時間が16時間より短かったらどうなるのでしょうか?また、長かったらどうなるのでしょうか?
通常の培養と比較し、培養時間が短いとIFN-γ値は低くなり、逆に培養時間が長いとIFN-γ値は高くなると考えられます。しかし、実際には詳細な検討 成績は無く、今後の研究課題です。添付文書の感度・特異度は、培養18時間前後のものですので、これから大きく外れる条件では、この感度・特異度は適応で きません。
IGRA検査はどの検査機関でも同じ結果になりますか?
IGRA検査の検体は生きている血液細胞を扱いますので、その扱い方により同じ結果にならないことも十分あります。また、体内の免疫反応を体外で正確に再現させなくてはならない検査法ですので、技術者の知識・技術力が影響する検査法と言えます。この意味では、検査機関の技術水準が結果に影響し、必ずしも同 じ結果に成るとはいえません。

 

その他

IGRA検査ではIFN-γを測定していますが、他の生理活性物質の変動は知られていますか?
現在、これに関する論文は幾つか報告されており、有望なものとしてIP-10があります。IP-10とIFN-γを同時に測定し総合的に判定することにより診断感度が上昇すると報告されています。
幾つかの試薬ロットを混ぜて使用したらダメだということですが、ロットが同じなら箱が違っても混ぜて使用しても良いと思いますが?
ロット番号が同じなら、箱が違っても試薬は混ぜて使用しても大丈夫です。また、QFTの採血管のロットは試薬のロットと関連が無いのでロットに関係なく使用できます。
血液以外の検体(胸水、髄液等)をIGRA検査に用いることはできますか?
胸水を用いたQFT検査の信頼性については、まだまだ議論の余地が残されています。一方、T-スポット.TB検査では、胸水や髄液を用いて良い成績が得ら れているという報告が幾つかあります。しかしいずれにせよ、これらIGRA検査キットは血液を用いることを目的として創製されているものですので、特異度・感度及びカットオフ値は血液検体に対するものです。従いまして、血液以外の検体を用いた検査結果は、あくまでも参考値として扱うべきであることにご注意ください。