IGRA検査について

IGRA検査について

IGRA検査とは

抗原特異的インターフェロン-γ遊離検査 (IGRA:Interferon-Gamma release assay) はBCG菌や非結核性抗酸菌
(一部の菌に例外あり)には無い結核菌特異的タンパクを抗原として血液中の免疫系細胞を刺激し、感染者の抗原特異的なT細胞の免疫反応(IFN-γ産生量もしくは産生細胞の数)を測定する検査で有るため、検査結果はBCG接種等に影響されません。
接触者健診においては結核初発患者の感染性期間にその患者と同じ空間にいた者をハイリスク接触者、濃厚接触者、非濃厚接触者、非接触者(接触者健診の対象外)と区分しています。
非接触者を除く三グループについて、臨床症状が出る前の時期すなわち潜在性結核感染症( LTBI :Latent Tubercurosis Infection) が診断できる検査で、LTBIの診断には非常に有効なツールです。
平成18年1月にQFT-2Gが健康保険適用になり平成21年7月にはQFT-2Gの感度や扱いやすさを改良したQFT-3Gが発売されました。一方でT-スポット検査も平成24年11月から 健康保険適用となりました。
これら二種類のIGRA検査は「判定不可」結果に対しては互いに補完しあえる関係に有り、高精度技術で実施した両者の検査性能は同等と考えられます。しかし検体の保管温度、培養に至るまでの時間、その後の処理技術が検査結果に大きく影響するデリケートな検査でもあります。
特に煩雑な技術を要するT-スポット検査は、自己流の操作によりバックグラウンドが出やすくなり、結果に齟齬をきたすことが多いのでT-スポット検査は自動化が難しく、高い技術精度が求められます。

 

2種類のIGRA検査発売迄の足取り

結核菌特異抗原の発見

結核菌特異抗原はデンマーク国立血清研究所のPeter Andersenに依り発見・報告された。

  • 1995年にPeter AndersenらがESAT-6を報告
  • 1996年にMahairas がSubtractive genomic hybridization法を用いて牛結核菌(M.bovis)に存在しBCGで欠落している遺伝子座を報告
    RD (region of difference) 1, 2, 3……
    ORF : RD1; 11, RD2; 13, RD3; 12……
  • 1998年にPeter AndersenらがCFP-10を報告
  • ESAT-6, CFP-10がRD1に存在(BCGでは欠落)
  • Peter AndersenらがESAT-6, CFP-10が結核に感染させたマウスのTリンパ球からIFN-γを誘導することを確認した

ESAT-6, CFP-10を分泌する抗酸菌

結核菌群 非結核性抗酸菌群
(環境中の抗酸菌群)
M.tuberculosis M.kansasii
M.africanum M.marinum
M.bovis M.szulgai
  M.flavescens
  M.gastri
  M.gordonae

結核菌群以外にも特異抗原(ESAT-6, CFP10, TB7.7)を分泌する非結核性抗酸菌群( M.kansasii, M.marinum, M.szulgai, M.flavecens, M,gastri, M.gordonae)があります。

ESAT-6, CFP-10が分泌できない抗酸菌

BCG亜株 環境中の抗酸菌群
Gothenburg M.avium
Moreau M.intracellulare
Tice その他大多数の非結核性抗酸菌群
Tokyo  
Danish  
Glaxo  
Montreal  
Pasteur  

BCG亜株全て、及びM.avium, M.intracellulareは、特異抗原(ESAT-6, CFP10, TB7.7)を産生分泌する遺伝子がありません。そのためにIGRA検査はBCG接種等の影響を受けることは有りません。

IGRA検査の原理

結核感染を受けた人の血液に結核菌に特異的なタンパク抗原(ESAT-6, CFP-10, 或いはTB7.7)を作用させ、血液中の抗原特異的T細胞から産生・放出されるInterferon-Gamma (IFN-γ)を測定して感染を診断する方法である。
この検査法は結核菌特異抗原を使用して、現在結核に感染しているか過去に感染したことのあるT細胞が産生するIFN-γを検出するため、ツベルクリン反応に比較して特異度・感度が極めて優れている。
今後望まれる点として、 IGRA陽性者に対して休眠期感染/現在の潜在性感染の判別、及び活動性結核に進む危険性を決定する技術開発が待たれるところである。

抗原特異的細胞性免疫応答

IGRAとツ反の特性に関する一般的共通認識

IGRAはツ反より特異度は高い

故に、BCG既接種者、また全てのツ反陽性者はIGRAで確認されるべきである。

IGRAはツ反で診断出来ない感染者も診断することが出来る

故に免疫抑制者においては ツ反に代えて、あるいはツ反と併用しIGRA を使用すべきである。

IGRAは1回のみの診療で完了する利点を持つ

故にIGRAはアクセスが困難な集団においても推奨される

IGRAの使用は、これを使用しない場合よりも費用対効果が高い

ツ反使用のみが最もコストが高い

IGRAの乳幼児への使用

接触者健診の基本項目になった

IGRAのガイドラインを持つ国および機関

•アイルランド •イギリス •イタリア •オーストリア •オランダ •スイス •スペイン、 •ドイツ •デンマーク •ノルウェー •フィンランド •フランス •ポーランド •ポルトガル •チェコ •スロバキア •クロアチア •ブルガリア •サウジアラビア •オーストラリア •韓国 •日本 •カナダ •アメリカ •ブラジル (25カ国 )

他に2つの超国家的機関 がガイドラインを制定している
World Health Organization (WHO)
European Center for Disease Prevention and Control (ECDC)

IGRAの対象

Active tuberculosis,
Contact investigation,
HIV Infected population,
LTBI Screening in Persons on TNF-α inhibitors,
Screening Immigrants,  
Serial testing in healthcare workers,