結核感染と免疫反応

結核感染

結核感染

下の写真は結核菌です。この菌は結核患者の咳やくしゃみのしぶきの中に混ざって空気中に飛散します。偶然にもそれを肺の奥まで吸い込み、肺内で菌が増え始めると感染がおこります。
通常は結核菌を吸い込んでも殆どの菌は鼻や口、のどの粘膜にぶつかり、感染には至りません(肺の奥までは到達しません)。仮に到達しても肺の中にはマク ロファージと言う清掃係の細胞がいますので、殆どの場合処理されて感染には至りません。処が、結核菌が肺の奥まで(肺胞)まで行き着き、マクロファージに 除去されず増殖を始めると感染が成立します。
結核菌は一般細菌と異なり増殖能が低いので、感染が成立しても直ぐに爆発的に菌数が増えて発病するわけではありません。この期間はLTBI期間と考えら れ、咳や微熱といった臨床症状は無いのですが、体内では細胞性免疫系の白血球が攻撃を加えている時期でも有ります。その攻撃をかわして結核を発症する場合 と、細胞性免疫に押さえこまれて身動きできなくなり休眠状態に成る場合が有ります。

小川培地上でコロニー形成した結核菌の一部を走査型電子顕微鏡で撮影したもので、実際は乳白色をしている。見易いようにピンク色に着色した。

結核感染と発症における免疫応答

結核菌が肺の奥まで到達し感染しても、自己の細胞性免疫の能力に依り、多くの人は休眠期結核感染となるか、自己の免疫力で結核菌を一掃して一生涯発病しないのですが、様々な原因で細胞性免疫の能力が弱くなって液性免疫が優勢化し、結核菌増殖が優勢になると発病の危険性も高まります。感染した後一生の間に発病する人は、10人に1人か2人と考えられます。

生涯に亘って結核が発症する危険度

殆どの場合、発病は感染後2年以内ですが、中には10年以上経過後に免疫力が低下して発病する人もいます(主に高齢者結核)。
そういう意味で結核は注意すべき病気ですが、結核が発病しただけでは他の人に感染することはありません。咳やたんなどの臨床症状が出て、結核菌が身体の外に出るようになって、初めて感染を起します。ただし適切な治療を行えば2週間程度で感染性(他の人に感染させる恐れ)は殆どなくなりますが、治療の完結には6ヶ月間服薬が必要です。

結核感染において想定されるサイトカイン産生応答

結核に感染した場合、潜在性結核感染者となり、体内には細胞性免疫応答が発動し、T-細胞はIFN-γ(炎症性サイトカイン)を産生してマクロファージを活性化し、マクロファージはその胞体内に結核菌を封じ込めて増殖を抑制します。
更には免疫系の細胞が胞体周囲を取り囲みマクロファージーもろとも結核菌の動きを封じ込めます。
この状態で終生結核を発病しない人もいますが、10~20%の人は結核菌が細胞性免疫能に打ち勝って結核を発病し、活動性結核患者となって結核治療を受けなくてはならなくなります。
活動性結核患者、潜在性結核患者の体内には量は異なりますが、結核菌が存在しています。その間は下図のようにIFN-γと呼ばれる炎症性サイトカインが産生されていると考えられています。